ERP導入のポイントとERPパッケージ5選|SaaS導入の専門家が解説
ERP導入を成功させるためには、最適なERPパッケージの選定が必要となります。
しかし、現在は多数のERPが市場に出回っており、どちらが自社に最適か判断することは簡単ではありません。
本記事では、ERP導入経験を持つ筆者が最適なERPを選定するためのポイントと、主要なERPパッケージ5選を解説します。
▼そもそもERPとは?という方は、まずはこちらからご覧ください。
目次
ERP選定のポイント
導入目的の明確化
ERPは多岐にわたる業務を一元管理することができるため、導入目的によってはERPの特定の機能にウェイトを置く必要があります。
例えば、
- 業務効率化やコスト削減が目的:製造業務管理機能や在庫管理機能を重要視
- グループ会社の管理が目的:連結会計の対応可否を重要視
このように導入する目的を明確にすることで、必要な機能や機能の優先度を決定することができるのです。
ERP選定の段階で企業の業務プロセスの現状把握や問題点の洗い出しを行い、ERP導入で改善・最適化できる業務プロセスを明確化しておくことで、本来の目的からブレることなく導入を進めることができます。
会社規模・業界との適合
業界によっては、特定のERPが小規模な会社向けに最適であったり、大企業向けに最適であったりする場合があります。
製造業では、生産ラインの数や工場の数などの要素が重要であり、これに応じたERPを選択する必要があります。
小規模企業であれば、必要な機能が少ないことが多いため、ERPの機能がシンプルであることが望ましいでしょう。
また、大企業であれば、多言語や多国籍法令への対応が必要であることがあるため、それに応じたERPを選択する必要があります。
さらに、ERPの導入には多大なコストや期間がかかるため、会社規模に合わせた適切なERPを選択することは、コスト削減や導入期間短縮につながります。
一方、不適切なERPを選択すると、必要な機能が足りず大規模なカスタマイズが必要になるため、追加のコストや導入期間の延長が発生する可能性があります。
機能性
必要な機能が含まれているかどうかに加えて、業務フローに合わせて柔軟にカスタマイズできるかどうかを確認しましょう。
ERPは、業種ごとに異なる機能やカスタマイズが必要になることがあります。
例えば、製造業や小売業の場合は、在庫管理や顧客管理が重要となる一方、サービス業の場合は、案件管理や請求書作成などが優先事項になります。
したがって、業種や業務内容に応じて、適切なERPシステムを選ぶ必要があります。
またUI/UXも大切なポイントです。
いくら機能が優れていてもユーザーに寄り添った画面設計・導線が用意されていなければ、実際の利用者からクレームが多発したり、適切に運用されないといったリスクが発生するおそれがあります。
デモンストレーションやトライアルで実際に画面を確認しておくとよいでしょう。
カスタマイズ性
企業ごとに業務の流れやデータの扱い方が異なるため、ERPシステムはカスタマイズが必要な場合があります。
カスタマイズができる範囲が広いほど、企業のニーズに合った業務フローを設計できる可能性が高まります。
本来はERPの導入にあたり、標準機能に合わせて業務フローを再度設計することが望ましいですが、企業独自の要件もあるかもしれません。
標準機能に備わっていない場合は、該当箇所のカスタマイズが可能かどうかを事前に調査する必要があります。
オンプレミス型かクラウド型か
ERPにもオンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型は、自社のサーバーにシステムをインストールして使用する方式で、セキュリティや管理がしやすい一方、初期費用がかかります。
一方、クラウド型は、専用のサーバーを持たずに、インターネット経由でシステムを使用する方式で、一般的にオンプレミス型よりも初期費用が削減できます。
社内のセキュリティ要件が高く、自社のサーバー上でデータを管理したい場合などはオンプレミス型を選択することになりますが、クラウド型ではインフラの設置やメンテナンスに関する負荷を軽減することができ、運用の簡素化や利便性の向上など、多くのメリットがあるため、特段の理由がない場合は筆者はクラウド型のERPをお勧めします。
コスト・導入期間
導入費用やランニングコストが予算内に収まるかどうかを確認します。
導入費用だけでなく、保守費用やアップグレード費用など、長期的なコストも含めたTCO(Total Cost of Ownership)を考慮する必要があります。
また、導入期間も企業にとっては重要なポイントです。
導入期間が長引くと、業務への影響やコストの増加が懸念されます。
反対に導入期間がタイトであっても、スタッフへのトレーニングや業務プロセスの変更などが必要になるため、これらの期間も含めてコストを見積もる必要があります。
サポート体制の確認
ERP導入後も、適切なサポートが受けられるかどうかも重要なポイントです。
例えばトレーニング用のe-learningが充実していれば、導入時のユーザー教育がスムーズに行えることでしょう。
導入時のトレーニングやアフターサポートが充実しているERPを選ぶことで、トラブルが発生した際に適切な対応を受けることができます。
ERPのサポート体制を確認することで、導入後のトラブルや問題を最小限に抑えられます。
ERPパッケージ5選
代表的なERPパッケージ5選の特徴と注意点についてご紹介します。
NetSuite
「NetSuite」はOracle社が提供する世界中で利用されているクラウドERPソリューションです。
- グローバル展開されており多言語、多通貨、多国籍会計にも対応
- 多機能
- カスタマイズ性が高い
- API連携も充実
SAP S/4HANA
「SAP S/4HANA」はドイツのSAP社が提供する市場シェアNo.1のERPです。
- グローバル企業向け
- 多機能
- カスタマイズ性が高い
- オンプレミス、クラウド両方あり
- 国内で利用実績の多い同社のERP「SAP ERP」が2027年に保守サポートの終了を予定しているため、次世代ver.のS/4HANAへの移行が急がれている
Dynamics 365
「Dynamics 365」はMicrosoft社が提供するERPを含む業務アプリケーション群です。
- オンプレミス、クラウド両方あり
- Excel、PowerPointなど他のMicrosoft製品との親和性が高い
- WindowsのUIと似ており、Windowsユーザーはとっつきやすい
ZAC
「ZAC(ザック)」は株式会社オロが提供するクラウドERPです。
- 日本国内での導入実績が豊富
- 日本の法令や税制に対応
- プロジェクト管理が強い
ここまで紹介した4製品は中堅企業以上がターゲットとなっているため多機能となっています。
それゆえに導入のハードルが高く、カスタマイズの難易度も高いので、信頼できる導入パートナーとの連携が不可欠です。
最後に、小規模な会社でも導入しやすいERPを紹介します。
クラウドERP freee
「クラウドERP freee」はfreee株式会社が提供するクラウド型ERPです。
- 中小、上場企業など業種を問わず利用されている
- 初心者でも使いやすいUI
- AIによる自動化が充実しており専門知識がなくとも始めやすい
- 欲しい機能に応じて低価格から導入可能
会社規模やニーズに応じた適切なERPパッケージの選択は、ERP導入の成功につながる大切な要素の一つです。
それぞれのポイントをしっかりと把握し、自社に見合ったERPを選定することが大切です。
是非、ERP導入のプロフェッショナルに相談してみてはいかがでしょうか。
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