OData(Open Data Protocol)完全ガイド:基本からSAP連携、将来性まで
ODataは、データの取得や操作を標準化するプロトコルであり、特にビジネスアプリケーションやデータ分析の現場で重要な役割を果たしています。
本記事では、基本的な概念から具体的な活用方法、そして将来の展望までを詳しく解説します。ODataを理解し、データ操作の効率化とビジネスの成長にお役立てください。

目次
ODataとは何か?
ODataの定義と読み方
OData(Open Data Protocol)は、Microsoftが主導して策定したデータ通信のための標準プロトコルです。
読み方は「オーデータ」で、一般的には「オープンデータプロトコル」として知られています。
このプロトコルはHTTPを利用してデータをやり取りするもので、特にRESTful APIの実装において広く採用されています。データの作成・読み取り・更新・削除(CRUD操作)を標準化された手順で行えるため、開発者にとって非常に扱いやすい仕様となっています。
ODataの仕組みと基本概念
ODataは「リソース指向」のアプローチを採用しており、あらゆるデータを「リソース」として扱います。
これにより、URLを通じてリソースへアクセスし、直感的にデータを操作することが可能です。
- 主な概念:エンティティ、エンティティセット、ナビゲーションプロパティなど
- 特徴:クエリオプションを使用し、URLパラメータだけでデータのフィルタリングや並べ替えが完結します。
ODataとRESTの違い
ODataとRESTはどちらもデータ通信に関連しますが、役割が異なります。RESTはアーキテクチャの「スタイル」であり、厳密な標準仕様はありません。一方、ODataはそのRESTの上に構築された「明確な仕様(プロトコル)」です。
| 特徴 | OData | REST |
| 標準化 | あり(明確な仕様に基づく) | なし(実装者に依存) |
| データ操作 | CRUD操作の標準化により容易 | 個別に実装が必要 |
| クエリ機能 | 豊富なクエリオプションを提供 | 基本的なHTTPメソッドのみ |
ビジネス視点で見るODataの価値
データが「資産」になる時代
現代のビジネスにおいて、データは「新しい石油」とも呼ばれる重要な経営資産です。しかし、データが散在していたり、アクセスに時間がかかったりする状況では、その価値を十分に活かせません。ODataの導入は、この「データ活用の壁」を取り払い、ビジネスの意思決定スピードを劇的に向上させます。
自社で持つデータの価値を理解し、有効にデータを活用することが重要です。
OData導入がもたらすビジネス価値
意思決定のスピードアップ
従来、営業データや在庫情報を確認するには、IT部門への依頼やレポート作成を待つ必要がありました。ODataを活用すれば、経営層や現場マネージャーが必要なデータをリアルタイムで取得でき、市場の変化に即座に対応できます。
具体例:
- 四半期の売上データを瞬時に分析し、戦略の軌道修正が可能に
- 競合の動向に合わせた価格調整を当日中に実施
- 在庫切れリスクを事前検知し、機会損失を防止
データサイロの解消によるコスト削減
多くの企業では、会計システム、CRM、ERPなど、複数のシステムが独立して稼働しています。これらをODataという共通言語でつなぐことで、システム統合の開発コストを大幅に削減できます。
ROI(投資対効果)の観点:
- システム連携の開発期間を従来の50%以上短縮
- 重複するデータ入力作業の削減による人件費の最適化
- データ不整合によるミスやクレーム対応コストの低減
新規ビジネスチャンスの創出
ODataによってデータへのアクセスが容易になると、これまで気づかなかったビジネスチャンスが見えてきます。
活用シーン:
- 顧客の購買パターン分析による新商品開発
- 地域別データの可視化による最適な出店戦略
- パートナー企業とのデータ共有による協業ビジネスの加速
経営層が知っておくべきODataのポイント
標準化による将来性
独自仕様のシステムは、ベンダーロックインのリスクがあります。ODataは国際標準であるため、将来的なシステム変更や拡張の際も、投資を無駄にせず対応できます。
段階的な導入が可能
全社一斉に導入する必要はありません。まずは特定の部門やシステム間の連携から始め、効果を確認しながら拡大していく段階的アプローチが可能です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤
ODataは単なる技術ではなく、企業のデジタル化を支える基盤技術です。データドリブンな経営を実現し、競合他社との差別化につながります。
ODataの全体像と特徴
ODataの主な機能とは?
ODataは、データアクセスの効率を最大化するために多くの機能を提供しています。
フィルタリング、並べ替え(ソート)、ページネーション、集計といった機能が標準装備されており、これらを活用することで、大量のデータから必要な情報だけを素早く抽出できます。これは特に、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータ分析の分野で威力を発揮します。
ODataコネクタの活用法
「ODataコネクタ」を利用すれば、異なるシステム間でのデータ連携がシームレスに行えます。
例えば、SAPやSalesforceといった主要なビジネスアプリケーションと連携する際、ODataコネクタを介することで、複雑な開発なしにデータの統合が容易になります。結果として、データの一元管理やリアルタイム分析が実現します。
ODataを利用したデータ抽出のメリット
ODataの導入により、データ抽出業務の効率は大幅に向上します。
- 簡単なクエリ構文: 複雑なプログラムを書かずにデータを取得可能
- 柔軟な操作: フィルタリングや並べ替えがURLパラメータで完結
- 統合の容易さ: 異なるデータソースを統一的な作法で扱える
これらは、迅速なビジネスの意思決定を支える強力な基盤となります。
ODataとSAPの連携について
SAP HANAとODataの関係
インメモリデータベースである「SAP HANA」は、ODataと組み合わせることで、その強力なデータ処理能力を最大限に活かせます。
OData経由でSAP HANA内のデータにアクセスすることで、リアルタイムなデータ分析やBI活用が容易になります。SAPのデータモデルはODataに最適化されているため、非常に効率的なアクセスが可能です。
SAP ODataの一覧と利用シーン
SAP環境において、ODataは以下のようなシーンで活用されています。
- ERPシステムとの連携: 外部システムからの安全なデータアクセス
- ビジネスアプリでの利用: SAP FioriなどのUIでのデータ表示
- モバイルアプリ連携: オフライン同期なども含めたデータ活用
これにより、データの整合性を保ちつつ、ユーザーへ迅速に情報を提供できます。
ODataを用いたSalesforceとの連携
SalesforceもOData(Salesforce Connectなど)に対応しており、外部データの統合が容易です。
Salesforce内のデータをOData形式で公開したり、逆に外部のODataソースをSalesforce上で表示したりすることが可能です。これにより、顧客情報や営業データをリアルタイムで分析し、ビジネス戦略へ即座に反映させることができます。
ODataを使ったクエリ操作
基本的なODataクエリの作成手順
ODataのクエリ作成はシンプルです。まず対象となる「エンティティセット(データの種類)」を特定し、次に必要な「クエリオプション」を指定します。これらはすべてURLの末尾に追加する形で行うため、直感的です。
フィルタリングと条件指定の方法
特定の条件に合致するデータを取得するには、$filter オプションを使用します。
例えば、「価格(Price)が20より大きい製品」を取得する場合のクエリは以下のようになります。
GET /Products?$filter=Price gt 20
このように、SQLのような条件指定をURLだけで表現できるのがODataの大きな強みです。
ODataクエリの実行とレスポンス解析
クエリを実行すると、通常はJSON形式でレスポンスが返ってきます。
JavaScript(Fetch APIなど)やPythonを用いてこのJSONを解析することで、Webアプリケーションや分析ツールでの利用が可能になります。データの取得から解析まで、標準技術だけで一貫して行える点も魅力です。
ODataのデータ処理について
データの取得と保存手順
ODataでのデータ操作はHTTPメソッドに基づいています。
- 取得(Read): GET メソッド
- 保存(Create): POST メソッド(例: /Products へPOSTして新規作成)
Web開発者にとって馴染み深いHTTP標準メソッドをそのまま使えるため、学習コストを抑えられます。
トランザクションとバッチ処理の利用
複数の操作(更新や削除など)を一度に行いたい場合、ODataの「バッチ処理($batch)」が有効です。
これにより、複数回のリクエストを1回にまとめられるため、ネットワーク負荷を軽減し、処理時間を短縮できます。また、トランザクションとして扱われるため、データの整合性も保たれます。
ODataの制限とベストプラクティス
便利ですが、クエリの複雑化やデータ量によるパフォーマンス低下には注意が必要です。
- 必要なデータのみ取得する: $select で列を絞り込む
- クエリをシンプルに: 複雑すぎるフィルタは避ける
- バッチ処理の活用: 通信回数を減らす
これらを意識することで、ODataのパフォーマンスを最大限に引き出せます。
ODataを利用したAPI開発の進め方
WebアプリケーションでのOData活用
ReactやAngularなどのモダンなフロントエンドフレームワークとODataの相性は抜群です。バックエンド側でODataエンドポイントを用意しておけば、フロントエンド側は柔軟に欲しいデータを取得できるため、開発効率が格段に上がります。
必要な環境とツールの構成
- サーバー側: ODataサービスをホストする環境(ASP.NET Core, SAP Gatewayなど)
- クライアント側: HTTPリクエストを扱うライブラリ(Axios, Fetch APIなど)
APIのテストとデバッグ手法
PostmanやInsomniaなどのAPIテストツールを使えば、クエリの動作確認が簡単に行えます。レスポンスの内容やステータスコードを確認し、意図したデータが返ってきているかを検証しながら開発を進めましょう。
ODataの将来と新たな可能性
ODataの最新バージョンと主な機能
ODataは進化を続けており、現在はバージョン4(V4)が主流です。V4ではデータモデルの柔軟性が増し、より複雑なクエリや集計機能が強化されています。これにより、高度化するビジネスニーズにも十分対応可能です。
データ連携の進化とODataの役割
クラウドサービスやSaaSが増加する現代において、「つなぐ技術」としてのODataの価値は高まり続けています。システムごとの独自仕様ではなく、標準プロトコルであるODataを採用することで、企業はデータの「サイロ化」を防ぎ、競争力を高めることができます。
まとめ
ODataは、単なるデータ通信の手段ではなく、ビジネスデータを効率的に活用するための標準語とも言えます。
- 標準化: RESTful APIのベストプラクティスを仕様化し、開発効率を向上。
- 柔軟性: URLパラメータだけで高度なフィルタリングやデータ操作が可能。
- エコシステム: SAPやSalesforceなど、主要なエンタープライズシステムと親和性が高い。
これからAPI開発を行う方や、データ連携の仕組みを検討されている方は、ぜひODataの導入を検討してみてください。データ操作の効率を高め、ビジネスの成長に大きく寄与することでしょう。
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